2013年11月29日金曜日

なぜ薬は苦いのか?

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味覚カウンセラー協会の斉藤です。
本日は、薬の苦味についての、お話です。













西でも東でも、「苦い味のしない薬はない」という諺があります。
事実、薬には苦いものが多いです。

人を含む動物にとって、苦味は毒の味として認識されています。
しかし、毒の中には強い薬理作用を持つものが多くあり、その化学構造を少し変えることにより、毒性のない薬に変身するものもあります。

一般に多くの薬は、細胞膜に存在する受容体のポケット状の部分に結合して、
薬理作用を発現します。このポケットは水になじみにくく脂質になじみやすい性質を持っています。

薬の分子にも疎水性の部分があるので、薬はポケットにすんなり結合できて、
低濃度でも薬理効果が生じます。


疎水性の強い物質ほど、苦味が強い傾向があります。
苦味は、味細胞膜に存在する苦味受容体のポケットに苦味物質が結合するために生じます。

このポケットも疎水性なので、
薬のような疎水性の大きい物質は、ここに結合しやすいので苦いのです。

2013年11月28日木曜日

おしるこに塩ひとつまみ。甘みが増す2つの理由。

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皆さん、寒くなってきましたね。
年末に向けて、いかがお過ごしでしょうか。

今回は、そんな寒い季節にぴったり。
「おしるこ」と味覚の話、です。


























おしるこに塩をひとつまみ入れると甘みが増します。
この甘み増強効果には、大きく二つの理由があります。

一つ目の理由は「対比」といわれる、
質の異なる刺激を同時に与えたときに一方の質の強度が強くなる現象です。

おしるこで「対比」を起こすには、塩をほんの少し入れたときだけです。
入れすぎると逆に甘みを弱めてしまいます。

「対比」はどんな味の組み合わせでも起こるわけではありません。
おしるこに酸っぱい味を加えても甘みは強くなりません。

また、質の異なる刺激を「同時」ではなく「続けて」与えても「対比」は起こります。たとえばはじめに食塩水を味わい、それから砂糖水を飲むと甘みが強く感じられます。これは「継続対比」といいます。

対して、同時に起こる対比を「同時対比」といいます。

「対比」のメカニズムはまだよくわかっていない部分も多いのですが、実験では舌ではなく脳のレベルで起こっている可能性が高いことが示唆されています。



















二つ目の理由は、
脳だけでなく受容体のレベルでも増強効果が生じているということです。

舌には味蕾があり、その中の味を感じる細胞には甘味受容体があります。
甘味受容体には砂糖などの分子が入るポケットがあります、
砂糖を甘く感じるのは、砂糖分子がこのポケットに入るからです。

食塩は受容体の形を若干変えます。
その結果、砂糖分子はポケットに入りやすくなり、甘みを強く感じるようになるのです。